top of page
検索

ハルカスから見る風景とバフェットの選択

  • 執筆者の写真: tsuruta
    tsuruta
  • 2020年9月14日
  • 読了時間: 7分

更新日:2020年10月28日

先日、家内とあべのハルカスにあるホテルに宿泊した。今までマスコミで話題になっていたが、機会があったので行ってみた。「あべのハルカス」が設立されて6年目になっていた。5、6年前はよく話題にはなっていたが、そういう時に長い行列に並ぶ気はなかっただけだ。今は静かでよいと思い、出かけてみた。


マリオットホテルのフロントでは綺麗なお姉さんから「GO TO トラベル」の申請はしないのか、と質問を受けた。そういう時代かと感じたが、そういうつもりはない。全て自腹でと言った。一泊4万円以上である。高いところに登り、ゆっくりと下界を見るのに予想外の出費だった。しかし、隣を見ると、一見してそのホテルに似合わない普段着を身に付けた若い夫婦と3人の子供という家族がいた。フロントの声がコロナの影響でパネルもあって聞こえず、ややうるさいなと思ったが、なるほど、これが「GO TO トラベル」キャンペーンの成果かとも感じた。これは政府の景気刺激策として意外に効いているのではないか、という気がした。


さて、そして東芝の静かなエレベーターで上に行き300メートルの高層ビルの部屋に通された。そこからの風景を下に掲げたが、想像と大きく違った。真ん中上下を走るのが「あべの筋」であり、その右下に空き地のように見えるものがある。何かと思えば「墓地」だという。あれほどの大きな面積を占める墓地が、大阪のど真ん中にあったのかと驚いた。聞くと「大阪市設南霊園」と言うらしい。「市」の所有なのであろう。左上には「ヤンマースタジアム長居」であり、昔の「長居陸上競技場」である。その先は「中百舌鳥」なのであろうし、そのむこうに「堺市」がある。300メートルの高さに登って、この位置関係を初めて知った。大阪の施設や町の位置関係が、ここまで一望できるとは思っていなかった。


自分の目で、実感した。


やはり、聞いたり読んだりすることと「体験する」ことには大きな違いがある。私も書籍は読む方だが、ここまでの実感は読書だけでは得られない。五感全てで感じるものは、記憶に一瞬で強く焼き付く。それが読書とは違う。そういう読書による感動は若いころは確かに強烈だった。感じやすい年齢でもあったのだろう。そういう思春期のような瑞々しい感受性は年とともになくなり、最近は読書では感動することが少なくなった。鈍感になったのだろう。これは仕方がない。感覚の鈍化は、慣れや経験で変化する。これは抗いようがないものだ。


体験とは時間効率が高い。一瞬で分かってしまう。感動も大きい。この上からの壮観で位置関係が全て理解できる。下記に掲げた風景を見ていて、経済でも同じではないかと感じた。近視眼で見ると、実態の経済はなかなか見えないものだ。


最近、バフェット氏が大手商社5社の株式を5%程度を上限に買い進むという。大変良い話と感じたが、これは、彼が日米の株式相場をハルカスのような「上から見た」時に感じたからではないかと感じた。アップルなどの成長株式を大量に保有し、またコカ・コーラなどのバリュー株も保有している彼は、米国ではこれ以上米国株を買うことにリスクがあるのだろう。ここからでは、日本の商社株式の方が成長余力は高く、また配当利回りも為替を考慮しても高いのだろう。これは上から見ないとなかなか分からない。


これは理解はできる。ただ、理解ができるということと、実行することでは話が違う。彼はハルカスのような高いところから見た日米の経済対比や業界壮観が見えたのだと思う。実感できたのだと思う。そして、決断したのだろう。


現在、米国のハイテク株調整が始まっている。当然だと思う。行き過ぎたものを調整する市場の健全な反応である。そして、関心は調整後の資金はどこに向かうかということ。その答えの一つが、バフェット氏の日本の商社株式への投資である。これから日本に限らず、本当に強い会社の株価は、いつかは見直されるものだ。それは商社に限らずメーカーでも起こるだろうし、サービス業でも起こるだろう。そういうと「勝ち組」だの「負け組」だの言う人がいるが、そんなことは当たり前であろう。業績が長期的に良くなれば、株価は上がる。そういう銘柄を選択していくのが投資家なのだ。バフェット氏の選択は当たり前と言えば当たり前なのである。


今の時代の投資におけるキーワードは「人も含めた無形資産価値」である。ここが大変、大事だ。例を挙げよう。


商社の人材の質は素晴らしい。商権等の無形資産も大きい。これは多くの人が賛同してくれるであろう。同じようにリクルートなどもそうではないかと思う。全て、有形資産長ではなく、人も含めた無形資産の「質」の差なのだ。そういう会社の発掘や再認識が大事だ。米国に比べて、日本の無形資産価値の上昇率は低い。有形資産のみを「梃」にした成長から日本メーカーはまだ抜け出していない。私自身もメーカー出身だけに、そういうところがある。成長要因の一つとして有形資産の質を必ず見る。だが、時代は変わっている。その変化した「物差し」で会社を見ないといけない。ただ、その「物差し」には数字がないのだ。これで普通の人はあきらめてしまう。特許庁などによる新しい基準で有価証券報告書で将来、開示してほしいと強く思う。第三者的な基準がないと数字にはならないからだ。投資家から見ると、各社のこれまでの成長の仕方を見ないと分からないものだ。IR面談でもそういうところはよく伺い、また見るようにしている。だが、はっきりとは見えない。結果は資金効率に出てくるのだが、出た時点で買っては投資では既に遅い。ここが難しい。産業そのものの研究や企業トップの話、成長の仕方を企業ごとに検証しているが、簡単ではない。正直なところ、果てしない仮説と検証の繰り返しだ。投資研究とは本来、そういうものなのかもしれないが・・・・。


そういうところを長く研究すると、結局、「人」ではないかとも思う。


ここをよく見ないと数字の罠にはまる。「経営トップや従業員の質」が利益の源泉という基本に帰る。やはり、知らないうちに世間の論調に流されている面もある。また、表面的な数字に騙されてることが多い気もする。それほど無形資産の将来価値向上への有効性はそれほど見えにくい。


昔の人は「目明き千人、めくら千人」といった。世間ではめくらのように甘い面もたくさんあるが、世間を甘く見たら、やがて目明きのきつい面に当たって身の引き締まるような思いをするということがある。突然、厳しい面に当たり立ちすくむということである。将来の期待利益をベースにした無形資産の基準がいつか必要ではあろう。そういうことを静かに見ていく姿勢は大切だろう。それに加えて、経営者や開発研究に携わる者の「人の質」や「振る舞い」は大事だ。ここを大事に見ていきたい。これはメーカー出身だから言えることかも知れない。ミクロの面かもしれないが、取締役会で無形資産の価値がわかり、そしてどのような議論がなされるかは、社外取締役の顔ぶれを見れば概ねわかるものだ。そういう社外取締役を選出しているか、大変に大事だ。


マクロの面で言えば、新総裁が今日、決まる。新総裁がマクロ経済をどう認識し、それをどう変えようとしているのかを、よく見てみたい。「マクロの安倍、ミクロの菅」と言われるが、本当にそうであろうか?マクロの正しい認識無くして、ミクロの正しい政策選択などありえない。これから構造改革で成長路線に乗れるであろうか?色々な課題はある。各省のDX化、それを前提とした果てしない法律改正、地方経済への景気刺激策、医療事務の合理化(なかでもカルテの様式統一とその電子化)などなど、課題は果てしないが、新政権は着実に手掛けていくことを期待したい。こういうことを自分の目でよく見て判断したい。それぞれの課題は、既得特権側を切り崩すことに困難さはあるが、今度の首相なら出来ると信じてはいる。だが、投資家としてはやはり、一歩一歩進んだ証拠をこれから見てみたい。マスコミを通じた印象だけでは間違いを犯す。ネガティブ情報が真実を隠してしまう。また、無責任な評論家も、いつものバランスを欠く発言で世間を惑わす。それが平和ボケした我が国の現実かも知れない。それでも十分、みんながそれなりに幸せだからだ。他人の目ではない自分の見方を養うことだ。


投資をこれからする方は、特に冷静に自分の目でよく見ることだ。出来れば高いところから、かもしれない。高いところから、経営者の足跡や向かっていく方向を見ることだ。意外なところに「墓場」があり、意外なところに「お花畑」があるものだ。さて、どちらの方向に、あなたが投資した会社は向かうのかな?


ハルカスのような高いところから、いつかまた日本の将来を展望してみたいものだ。




 
 
 

Comentários


記事: Blog2_Post
bottom of page